雁の寺 (1962)

水上勉の同名小説を映画化した官能サスペンス。舟橋和郎と川島雄三が共同で脚色。川島が監督した推理もの。撮影もコンビの村井博。

監督:川島雄三
出演:若尾文子、木村功、高見国一、三島雅夫、山茶花究、二代目中村鴈治郎

雁の寺 (1962)のストーリー

洛北は衣笠山の麓、灯全寺派の孤峯庵は京都画壇の重鎮岸本南嶽の雁の襖絵で名高く、雁の寺ともよばれていた。ある日、喪服姿の桐原里子(若尾文子)が山門を潜った。南嶽の妾だが、彼の死後、遺言により孤峯庵の住職慈海(三島雅夫)を訪れたのである。慈海は里子のやわ肌に戒律を忘れた。そのまま慈海の世話をうける身となった里子の眼にとまったのは、小坊主慈念(高見国一)だった。若狭の貧しい寺大工の倅として育った慈念は、口べらしのためこの寺に預けられ、宗門の中学校へ通っていた。同じく貧しい家庭に生れた里子は、いつしか慈念に同情をよせるようになった。ある夜、狂おしげにいどみかかる慈海との情事に耽溺していた里子は、障子に人影の走るのを見た。慈念に覗かれていると知って、里子は愕然とした。勉強がきらいな慈念の無断欠席をする日が多くなった。宇田先生(木村功)からそれを聞いた慈海は慈念を叱った。里子が庇うと、慈海は同情は禁物だといった。若狭西安寺の住職から慈念の生い立ちを聞いた里子は、身をもって慰めようと彼の部屋に忍び入り、惜しげもなく体を与えた。翌朝、慟哭する慈念の瞳が、何事かを決するように妖しく光った。夜更けに酩酊して帰った慈海は、何者かに襲われてばったり倒れた。その夜明け壇家の平吉が兄の葬式を頼みに駆け込んだ。里子は慈念を碁仇の源光寺に走らせたが、慈海はいない。源光寺の雪州は慈念の宰配で葬儀を出してやった。慈念は里子に和尚は雲水に出たらしいと告げた。棺桶の重さに不審を抱いた入人も、慈念の態度に気圧されたかたちで葬式は終った。慈海の失踪を知った本山では、宇田竺道を孤峯庵に入れることにきめた。慈念も里子も慈海のいない寺にいることはできず、身の回りを整理して寺を出ようとした。「和尚のいるところへ旅します」という慈念の言葉に、ハッとなった里子は方丈に駆け入った。南嶽の描いた子雁に餌を与える母雁の襖絵が、無残にも剥ぎとられていた。里子にはおぼろげながら、慈海が殺されたことが判った。

関連記事

  1. 花くらべ狸道中 (1961)

  2. 瘋癲老人日記 (1962)

  3. 女は二度生まれる (1961)

  4. 東京おにぎり娘 (1961)

  5. 妻は告白する (1961)

  6. 婚期 (1961)

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。