清作の妻 (1965)

吉田絃二郎の同名小説を新藤兼人が脚色、増村保造が監督した女性ドラマ。撮影は秋野友宏。

監督:増村保造
出演:若尾文子、田村高廣、小沢昭一、殿山泰司

清作の妻 (1965)のあらすじ

お兼(若尾文子)は病身の父を抱えた一家の生計を支えるため、六十を越えた老人(殿山泰司)に囲われた。今その老人も千円の財産をお兼に残すと他界した。そしてお兼の父も時を同じくして死んだ。大金を手にした母お牧は、かつて逃げるようにして離れた村に喜々として帰った。気のすすまぬまま母に従ったお兼は、ものうい放心した日を送っていた。村一番の模範青年清作(田村高廣)の除隊は、お祭り騒ぎの内に迎えられたが、村八分同様のお兼らには関知せざることであった。清作は軍隊で貯えた金で鐘を作り、村人を堕眠から覚ます警鐘を鳴らし、村人からは英雄視されていた。そんな清作とお兼が愛しあうようになったのは、お牧の急病で、清作が医者のもとへ走ってからであった。お牧の野辺送りも清作の尽力で無事終った。二人の結婚は村人の敵視の中で行われ、清作は家を捨ててお兼の家に入った。お兼の性格は一変し、野良仕事に精を出す毎日は、甘く充ち足りた日々であった。だが日露戦争の勃発は、二人の上にも暗い影を落した。清作は召集され、お兼は孤独と冷やかな周囲の目の中で過した。ある日、清作は名誉の負傷を受けて送還された。英雄となった清作に、お兼は殊更村人から疎外された。だが二人の愛情は、周囲の反撥にもめげず高まっていった。やがて傷が癒えて、戦場に帰る時が来た。村人たちは今度は清作が英雄から神になることを期待し、清作も軍国の模範青年たることを疑わなかった。出発の時間が迫り、お兼と清作が二人になった時、お兼は五寸釘で清作の両眼を刺した。突差の出来事に呆然とする村人の中で、お兼は半狂乱であった。清作が虚飾に満ちた自分の過去を悟り、お兼の愛の深さを知ったのは、日露戦争も終った頃であった。

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